待ってます。


 友人が仔猫の里親になって、この春から親バカしてる(らしい)。二匹の猫の母をしている友人も、もう長いこと親バカしてる。わたしも猫を飼っていたときは、どっぷり親ばかものでした。

 かれこれそれは24年くらい前、捨て猫の母になった。
「そろそろ…」と獣医に言われて避妊手術をしたら、術後の体調がよろしくない。再度治療入院したが、快復せぬままに、お金と見舞いとわたしの涙の甲斐もなくお別れとなった。そのときの入院治療費は20数万円、合同墓地に埋葬してもらって、数万円を払ったような……。仔猫、麦(むぎ)は、数カ月のみのつき合いの思い出とオモチャとトイレ用具を残して逝った。
 その麦は、わたしが台所に立つときまって背中を爪を立てて登った。夏だったので薄着の背中にたくさんの爪痕ができた。でも、登り切ってくれて、肩の上からわたしの手元を覗いている感触が、これまた気持ちよかった。それにトイレとフロには必ずついてきて、その寂しがりや具合も、猫はかなり親ばかゴコロをくすぐるのですな。

 あー猫が飼いたい。

 その後、紆余曲折を経てわたしのところにおさまった黒猫のビビが、麦の猫グッズを引き継いだ。麦とはまるっきり違うタイプの仔猫で、腕力と足腰の強さを誇り、もりもり食べた。そして大きく成長されたカラダで甘えられると、ちょっと迷惑だった。夜中に恐い夢をみて目を覚ますと、必ず心臓の上あたりでビビが丸まって寝ているのだ。弱者に強く、強いものにはエサまで差し出す見かけ倒しの小心ものだった。

 あー猫の想い出を語ると、どっぷり親ばかもんになってしまう。

 事務所からの帰り道、猫の溜まり場が三か所ある。
 ひとつ目は自転車の駐輪場なんだけど、その猫らに近寄ると必ず逃げられる。尻を向けたまま振り返って、わたしのその後の動きを窺う。そういえば、「猫とオンナは近寄りゃ逃げる」ってむかし友人が言ってたけど、首輪していて飼い猫のようなのに、なぜなんでしょう?

 うちのお隣りさんには犬がいる。わたしがバイクで出かけようとすると必ず吠える。自転車で出かけるときは尻尾を振るだけの簡易喜びですが、バイクのエンジンをかけると吠えだし、わたしを見つけると尻尾振り振り回転して嬉しがり、手を差し出せばアタマ擦り擦りして親愛の情を示す。散歩に連れて行ってやったことだってないし、エサだってあげたことないのに不思議です。昨日はサービスで、彼女の前でバイクで二回転してあげました。

 ふたつ目は途中の駐車場。わたしが勘定した最大数は八匹、そのほとんどが似てる。誰かが近くにエサを置いているようです。なら、野良かと思いきや、首輪をしている。いつも停まっているミニパジェロのタイヤを抱えた姿で乗っかって寝ていた姿は、カメラさえあれば賞状級の一枚が撮れたはず。触らせる猫とさせない猫がいる。

 みっつ目は、うちの近所。白と黒の二色構成のそこの猫は、その容姿から家族もののようです。で、野良だと思う。白地の顔に黒い部分がバットマンの覆面そのもので、何匹かには、そら豆のような形をした黒い部分が鼻の下にもある。それでしょっちゅう生後3、4か月くらいの仔猫の姿を見かける。それも今のところに越して来てからずっと。仔猫の姿をした親爺猫か? それともしょっちゅう産まれてるんだろうか? 謎だ。でも、そのわりには猫被害を近所で聞かないが、うち辺りは彼らのテリトリー外なのかな。

 あー猫が飼いたい。
 だけど、旅に生き物は、なかなか共存できません。だから、うちにふらっとやってくる猫をずっと待っている。だけど、なかなか来ない。二年前にベランダに猫の足を見つけて喜んだ。それから数日後、障子を開けたら、猫がベランダで寝ていた。思いもしなかった塊が足元にあって、驚いた。

 やったっ! 待望の風来猫かしら?

 寝起きの不機嫌さを隠さない顔で、猫は足元からわたしを見上げた。待望だったけど、障子を閉めた。猫は逃げることなく寝直してから後、どこかへ行った。野良か飼い猫かはわからなかったけれど、いま思い返せばののちゃんちの犬みたいで、新しいタイプの親ばかもんになれたかも。あれからたまには来ているのか? 不明。

 シベリア鉄道に乗ったときは、鉢植えの植物にタイマー付の水やり器を設置した。植物がダメになってはいなかったが、屋内が気に入らないのか、ほとんど成長していなかった。旅行前には太いアスパラが出はじめていたのに、帰ってきたら成長してしまったアスパラが、七夕用の笹みたいになっていて、細いのしか出なくなってしまった。播いた覚えのない大葉が陣地を広げて、アスパラ地帯を覆ってもいたし。

 12年前、野良猫の母をした。彼らにはわたし以外にも母が何人もいて、父もいたかもしれない。それなのに、エサを届けると毎回がっついて食べた。他の母からもエサをもらっているの見たことある。だけど、その食欲ぶりが、わたしをエサ買いに向かわせるのでした。引っ越しの数カ月前から「なっちゃん」という名札を首から下げるようになったけど、わたしがあげるいわしのツミレを喜んだ仔猫の「ボタン」。
 あのときのボタンとレンギョ(突然に消えた)みたいな風来猫を待っています。選り好みはしないつもりです。