あ〜。

 無性に淋しい。
 これは、もしかしたら、まさかの子離れをさせられた母の心境だろうか? とにかく、ココロに穴が開いた感じ。わたしの棚にかなり空きができて、ココロの穴と共鳴している。

 旅行人山荘で展示会をするために棚から布を引っ張り出して、しばしの別れを惜しんだり、久々の対面を喜んだり、買った店のオヤジの顔を思い出したり、あー欲の皮を突っ張らせて運んだ想い出が走馬燈のようにぐるぐる回る・・・わたしが死んだら・・・と、布の行く末を案じたりもしていたら、「さっさと準備しろ!」ってデリカシーのない大声が後頭部に突き刺さった。

 最初の布はどれだったのだろう? とにかくいちばん高いのはイスタンブールで買ったシルクの絨毯だが、これはちょっと後悔している。玄関マットサイズなんだけど、シルクだし、大きさの割に超高かったので足首より下には敷けない。ましてや、ゴキブリ詣でのあるうちの玄関マットなんかにはできやしない。
 イスタンブールでは新品のトルコの絨毯や、やや古めの中央アジアの絨毯を何枚も買って、旅先で憧れの絨毯ライフを夢見たんだが、今のところぐるぐる巻で出番を順番待ちしてる状態だ。

 インドのアッサム、グワハティの町でやっていたエキジビション(物産展)。そこに来ていたオリッサの青年、コルカタ若い女性、彼らの持っていたサリーが気に入って、次のインドで地図の中から彼らの住む村を探して訪ねて手に入れたサリー。あっという間に、十年以上も前のストーリーになってしまったが、彼も彼女もどうしているのかなぁ? わたしはあの時と同じように、旅に出ては、布にちょっとよろめいて買いつづけている。そうすることが、あなたがたの次の一枚につながる気がして、欲の皮を突っ張らせています。