天を仰ぐ。

 テレビでW杯観戦をしていて、時折り映る観客席。彼らは両手を宙に揚げ、そしてアタマにおろされる。
 ふふふ・・・聞こえはしないが、あれはきっと「オー・マイ・ゴッド!」って言ってるんだ。待てよ、あの時のイギリス人はともかく、フランス人の場合はなんて言ってるのだろうか?
 まあ、そんなことはどうでもいい。

 言葉にならない声がある。
 たとえば、枯れた君子蘭の鉢をひっくり返したら、根っこが巨大なアリの巣になっていて・・・。
 腹の底あたりで「ぎょえっ」って気分が沸きたったが、口からは何も出なかった。オソージガカリさんはまだ寝ているし、恐怖の悲鳴を上げても、ご近所さんを慌てさせるだけだ、とわたしは瞬時に身を守ったのだろうか?

 思い返しているんだが、君子蘭を始末したあの日の朝は「ぎょえっ!」じゃなくって、わたしも「お〜まいごっど!」って気分だったな、とサッカーを観ていて気づいた。
 オーマイゴッドの気持ちを日本語で表現したなら「なんてこった!」だろうか? いや、もうちょっと違うな。
「カミサマ、わたしになんてことなさるんですか?」「試みに遭わせず、悪より救い出し給え・・・」だな。

 梅雨時の露地物野菜のお悩みは、ナメクジのおまけ付きだ。葉っぱモノをしばらく水に浸して持ち上げると、たいてい1匹くらいぷかぷか漂っている。もう一度、浸けておくと、まただ。このあたりでなら驚かないが、それが冷蔵庫の野菜室だったり、流しの縁に見つけると、わたしだって腹の底に「お〜まいごっどっ!」が轟く。
 声にはならない。
 やはりだれかに聞いてほしくて声は出るもんじゃないだろーか。オソージガカリさんはまだ寝てる。
 ナメクジだけじゃない・・・冷蔵庫の中でも葉っぱを食いつづけているヤツがいて、葉に空いた穴が広がっている気がする。思い過ごしだろーか?
 猫の額ほどのわたしの畑のバジルなんだが、いちばん使い道のわかっているお気に入りが、穴だらけ。ずんずん増える穴と大きさに、わたしは毎朝「お〜まいごっど!」であります。でかいバジルを育てようと肥料もしっかりやったんだが、出てくる新しい葉は、夕方には穴ぼこだらけで、旧ザイールの道路に空いた穴に似たものがある。
 で、見るたび朝に夕に「お〜まいごっど!」
 実は、それでバジルペーストをつくる予定で、フードプロセッサーだって新調したっていうのに。貯めたポイントで買ったんだけど。

育てる野菜はうまく育たないが、勝手に育つ野菜もある。クルマの下のけなげな里芋。