燕のヒナかな?


 ようやく爪を切ることができた。

 爪が伸びて不快を感じるのはたいがいが夕飯のあとで、スポーツニュースを見ているときに思い出す。しかし、わたしは夜に爪を切ることができない。それなら……と明日の朝を待てば、不快をそのまま忘れて夜になって再び思い出す、をよくくり返します。

 夜に爪を切ると親の死に目にあえない──そう言われてきたので夜の爪切りは気持ちが悪い。親の死に目にあえないということは、「親が早死にする」「どこか遠くにいて、親元に戻るのが遅くなる」と漠然と思っていたのですが、どうも違うようですね。

 早死にするのは親じゃなくって、爪を切った当人。その正体は「世を詰める」なんじゃなかろうか、とこの頃思うのです。わたしのせいで親が早死にするのは申し訳なくて切れなかったが、自分が早死にするのなら爪を切ってもかまわない!? とも思ったのですが、逆さを見せるのは、やっぱり申し訳ないので、夜の爪切りはできません。

 写真(撮影はカメラマンの酒井一郎さんです)のヒナは、たぶん燕のヒナです。今年の勝手にキャンプ大会で、入会の森キャンプ場の女子トイレの入口、電灯のスイッチの脇に巣があって、ドアを開け閉めするたびに三羽のヒナが巣から顔を出してエサを乞うのです。まるでビックリ箱からピエロが飛び出すように。

 だけど、夜も昼も親鳥の気配がありません。週末が過ぎて、キャンプ場が静かになったら親鳥が戻ってくるのでしょうか?

 鳥の巣というものはいつも見上げた場所にあって、そこから聞こえる鳴き声とヒナがたてる音だけでその気配だけを感じていたのですが、こんなに間近で、しかも見おろす姿勢で燕のヒナを見たのは初めてです。その未熟な姿は、見る側に「不憫」を感じさせ、「何とかしてあげたい」感情を抱かせるものですな。とか思いつつも、何もしてやらなかったが、子どもたちはミミズを探して、食べさせていた。