病の素。


 数週間ぶりに知人に会ったら、彼女の顔が、なんだか変。なにが変なのか……と顔を探ると、まつげが無い。目を覚ましたら、まつげがぜーんぶ抜けていたんだって。それで部分的に少しだけ生えだしてきたまつげが目に刺さって、ちくちく痛いとグチていた。

 わたしはときどき、「チョコレートが食いたい病」にかかる。そしてその病につづいて必ず口内炎ができ、しょうゆ味に数週間苦しむ。口の中がチョコレートでいつも汚れているせいか、なかなか治らない。

 大量のチョコレートを短期間に食べつづけるとビタミンが破壊され、「もうそれ以上、食べたらいかんっ!」って警告で口内炎ができる、とわたしは解釈していた。だけど病気だからしかたがない。注意報が出たって、悪いとわかってたって、止められない。突発性中毒かもしれない。我慢すると幻覚とか幻聴、眠れないってことはないけれど、いてもたってもいられない。口にチョコレートを放り込むと、仕事が続けられる。おせんべではダメで、大福とかケーキを代用してみるが(カロリーに関しては代用になってないよなぁ)、やっぱりチョコレートが効く。

 しかし、幸いなことにわたしの口は傲っておらず、どんなチョコレートでも構わない。百円級の板チョコで満足。が、大人となった今、チョコレートを自由に買うカネに不自由しない。これが、いかん。しかもうちの鏡は暗いところにあって、これもいかんのだな。現実を直視しなければ。

 甘党じゃない人はいいよなぁ。うちの父親は両党で、酒飲みながら饅頭食べられる人だしな。彼の血がわたしにもちゃんと流れてるんだな。
 ちなみに母は間食をほとんどしません。ミカンを食べている姿は思い出せるけれど、あとは食事をしている姿くらいです。が、デブです。そろそろ体重を気にしなさいって医者に言われるくらい太ってる。
 ダメじゃん。

 子どもの頃、母は仕事先のお茶の時間に出されたお菓子を食べずに持ち帰り、わたしたち子どもにくれた。父親は食べちゃって、子どもに持ち帰るなんて芸はしなかった。子ども心にも「やっぱり母性愛は偉大だっ!」って思っていた…ら、数年前に知ったのですが、母は甘い物が苦手。そして甘い物だけじゃなく、菓子類一切が好きじゃないと聞かされた。そのわりにはお菓子がいっぱい詰まったような腹をしています。昔から。

 わたしは中学の頃から口内炎とは縁があって、高校生のときに最高記録を出して、23個ほど作った。以来、口内炎とは仲の悪い友できた。医者の友人にもらった口内炎の薬はよく効くのですが、感触がものすごく嫌いで、いつも自己努力で治すことにしている。

 ここ十年ほどの口内炎パターンとしては、忙しくって昼飯にできあいの弁当を買い食いつづけても、できる。だから、ずっと、弁当の中にわたしを苦しめるナニかが振りかけられているに違いない、と疑っていたのだが、どうも違うようだ。

 ストレスが口内炎をひきおこす、という記事を読んだ。わたしにも人並みにストレスってのが存在していたらしい。チョコレートが食いたい病は、アタマを使うのに糖分必要(西原理恵子の『毎日かあさん』に描いてあった)で、それで仕事中、たまらなく食いたくなっていたのだ。

 仕事が一段落ついて三日後、口内炎は治った。そういえば、ここ三日はチョコレートも食べていない。チョコレートを食べなくても大丈夫な体調になったけど、通常帰宅の夕飯後の時間にゆとりができて、甘めの物をちょいと買い置きしてしまう。いかん。

 ちなみに友人のまつげはストレスで抜けた。旅行人の相田は「片付けられない症候群」と自己申告するんだけど。最近、ビョーキが増えている気がする。