シベリア帰り。


食わねば痩せる──ごもっともです。

 大飯食らいではあるが、切なるダイエット希望のわたしに向かって、クラマエがその昔、よく吐いたセリフです。

 今回はちょっとシベリア帰りである。だからちょっと期待していた。たいしたもの食べてないし。多くの食がハムとチーズばっかりだったし、行動食のチョコレートだってふたりで三枚だけだったし、水をたくさん飲んだし(クラマエはコーラをたくさん飲んでたけど)。あっ、でもアイスクリームは何度も食べました。美味しゅうございました。
 帰国後、初の入浴前に体重計にそろりと乗った。そろりと乗ったからとて、それで御慈悲の数値が出るわけではないことは重々承知ですが、一応、心臓が年寄りと医者に言われている身なので用心した。

 また増えている。この数値は機内で食べたカップラーメンがまだ腹に残っているにちがいありません。それに歯に凍みたあのチョコレートべっちょりの機内食のケーキもまだ滞在中なんだと思う。旅の最終日、ロンドンのインド人街でバングラ出身のウエイターを感心させるほど山盛りカレーを食べて(デザートの権利をも放棄せざるを得ないほど食べた)、そのせいで夕食が深夜になってしまい、ヌードルスープ肉入りも意地汚く完食したのもまだきっとご滞在なさっている。

 他には理由が思いあたりません。それらが身を通過したなら、絶対に数値に変化が表れることでしょう。それはいつなんだい? が知りたい。
 今回の旅では朝から晩までよく歩いた。通常は夕方までしか歩かないのだが、ロシアの夜は暗くなるのが十時過ぎで、日暮れの気配を感じて部屋に戻るともう九時過ぎだった。それからシャワーを浴びて夕飯。一日三食しっかり食べたが、それでは足りないくらい一日中歩き続けた。その名残は、いまも足の裏に残っている。

 平らな道を歩いていても、土踏まずあたりに石ころが当たるような痛みがある。この痛みが消えた頃、いい数値が表れてくれるでしょうか? 
 旅行前に買った新式の体重計で測ったわたしの代謝率は、75歳以上だった。かなり心臓に悪い数値だった。旅行人の相田さん宅の表によれば55から60歳くらいのようだけど、うちの説明書では問題外扱いの数値だった。

 心にキズを残し、今はせっせと仕事に励むことにした。励むとイスに座りっぱなしの日がつづくのだな。

 今回気づいたのですが、いまの時期に家を留守にすると、かび臭くなるのですねぇ。帰国した日、雨が降っていたので換気をしっかりしないままかび臭い中で寝てしまったのですが、翌朝、気分の悪いことこの上なし。頭痛と歯痛と倦怠感に包まれ、かびも小粒ではあるがぴりりと恐いと、あらためて気づいたしだいです。