治療薬。


 風邪をひいたようで、咳が出て鬱陶しいです。薬局で風邪薬と喉の炎症を沈める薬とのど飴を買ったら4000円近いお金を払うことになって、思わず、え? 
 頭痛用くらいしか薬の世話になってなかったので、あらためて薬の値段の高さに驚いたのでした。

 インドのチェンナイでスーパーマーケット内を歩いていたら、若い女性に突然に腕を掴まれた。なんだなんだ? そして顔の前に緑の容器をかざし、もう一方の手でわたしの顔のあちこちをプヨプヨ押します。
 そうか、インドも都会ではこんな販売方法をするようになったのだなぁ、と感慨深いものがありました。
 南インドアーユルヴェーダ商品が盛んであります。彼女がわたしに見せたのは、肌を白くするクリーム。夜用と昼用があって、他にも乾燥肌用、脂性肌だとかいろいろある商品の説明を英語でされて、手ぶらじゃその場を離れられないそのセールスの迫力に、肌を白くする夜用のクリームをひと瓶買いました。フタにココナツの絵が描いてあって、180ルピーでした。

 UV商品も日焼け止めクリームなんぞも無視した日常をおくっているせいか、日本の化粧品販売員から声もかけられないのに、ありがたや。わたしの色黒を心配してくれるのは、母とインド人の彼女くらいかも知れませぬ。感謝せねば。
 うちの洗面所は暗いし、もう一か所ある鏡の場所も暗いので、わが家ではシミもソバカスも頬の弛みもシワも、よく見えません。自分に見えなければ対処しようがないというか、対処しようという発想がわかないわけですね。心理だわ。
 しかし、鼻毛が切りにくかったのか、クラマエが洗面所にスポットライト式の電球を取り付けました。そんな便利なモノが付いても灯りを点ける習慣がわたしにまだ備わらず、暗闇の中のわたしには、今だシミソバカスその他諸々の加齢症が認知されていません。

 ここ数年、冬になると向こう脛の部分だけが白くなってカサカサし、痒くなります。今年も11月上旬あたりから痒くなって、ボリボリ掻いたら赤くボツボツした肌になってしまいました。薬局で相談したら、「それはですねぇ、肌が乾燥してるからですよ」とおっしゃって、「まさしく加齢症ですよ」とフォローまで入りました。
 乾燥の季節のはじまりにクリームでも塗っておけばよかった……と毎年思うのですが、毎回忘れる。痒くなってから思い出すを繰り返していたのですが、今年も忘れて痒くさせてしまいました。そして痒い足のまま南インドに旅立ちました。
 すっかり痒い向こう脛のことなど忘れて帰国。気づけば、あーら不思議、白くカサカサ赤くボツボツしていた脛が治っておりました。

 たっぷり汗をかいたからでしょうか? 雨にも降られたし、湿気をたっぷり含んだ空気が治療薬になったのかも知れません。ということは、サウナに入っても治るのかなぁ?

 今回は幸いにもカラダがリセットされたので、帰国後からは風呂上がりにクリームを塗っているので痒くなく、平穏無事な乾燥の季節を送れそうです。