考えてみてくれないか?
足下を見る。
バンビロコウダカの足がある。「板広甲高」と書くのかな。
わたしの足を表して「弁当箱のようだ」と言ったのは、あいかわらずの母だ。そのふたつの弁当箱に踏みつぶされたサンダルが、玄関に散らばる。片づけるべきなのだが、くつ箱が満杯で、はみ出しているのだ。
古いものでは26〜7年前のピンヒールのショートブーツがある……と思う。カビが猛威をふるってやしないか心配だ。履く機会がめっきり減ったというかなくなった「いざっ!」ってとき用の白のパンプスもあるはず。きっと白なんかじゃなくなって、アイボリーに近づいているだろうな。
つま先はもうわたしの体重をそう長くは耐えていられないだろうし、それにハイヒールを不格好な足どりで歩くのは、見るに忍びない。ハイヒール歩行には柔軟な膝と腰をサスペンションにして、物腰柔らかくが必要だけど、わたしの腰はもうぺしゃんこヒール仕様だし。
もう無理だな──だから、捨てたらいいのに。
だから、靴箱の神秘は果てしなく深まるばかりだ。
自分のことは、いつも「さておき」なんだが、ひとこと言いたいことがある。
捨てたらいいのに、底がすり切れたクツなんか。
シベリア鉄道に乗ってモスクワで壊れたサンダルも。
応急手当で、O字型のキーホルダーで甲の左右を繋いだら、いつまでもそのままま履いている。夏の出動回数はダントツ一位、ぶっちぎりの一位。今年もだ。シベリア行ったのは去年じゃないぜ、一昨年だ。そろそろ新しいの買ったって、バチは当てさせない。突然に、いざ!って時がきたらどーするんだ? とも思ったが、いざ!って時にサンダルは履かないよな。
実はメキシコにスニーカーで行って、暑くて途中でサンダルを買った。カッチョ悪いんだ、そのサンダル。古くさくオヤジ臭いデザインで、絶対に日本じゃ履かないと思うし、それ履いてどこの国に行こうって気だい?
9月に終わりが来たら、考えようと思っている。わたしのショーツブーツと不健康なサンダル。
だから……考えてみてくれないか。