ワケがわからないこと

 すごいもの見ちゃったな。話には聞いていたけど、ホントだった。
 というのは、知人が私鉄電車内で目撃した、女性がスーパーの袋から石けんとか衣料品を取り出して、それらの包装類をすべて剝がして中身と包装類を別々の袋に分けて入れていた光景。で、たぶんゴミ扱いになりそうな袋のその後の行方はわからないが、なんで電車の中でそんなことしなくっちゃならないのかそのワケがわからない、と彼女が言っていた。
 わたしが見たのは、スーパーでレジを抜けた後の荷造りをする台で、女性がお肉のパッケージをすべて開き、かぶせてあったサランラップでその肉を包み、トレー類は足下のゴミ箱に捨てていた。他の商品も取り除ける物はほとんど剝がしてゴミ箱に捨てていた。
 前者は世田谷区で彼の区のゴミ捨て事情は知らないが、後者は練馬区のスーパー。練馬区の通常ゴミの回収は有料じゃないし、なぜなんだろう? 家まで遠くってトレーとか包装類の重量が彼女にとって負担だったから? うーむ、出すゴミの量を減らしたい? でもそれは、家で出そうがスーパーで出そうが、自分が出すゴミの量が減るってことじゃない。もちろん、家で出す分は減るだろうが、自分がつくっているゴミの量にかわりはない。
 そうだ、スーパーの過剰包装に対する仕返しかもしれない。でも、台の脇に洗い場があるんだから、トレーは洗ってから捨てたらいいのに。
 訊けば良かったな。次に見たら、訊いてみよう。
 近所の魚屋が、生もののついでにお総菜も売っている。マグロの佃煮とかサカナのフライ、ときにカボチャなんかの野菜の揚げ物も売っていて、ひとつ5、60円とお安い。おばさんたちが買っていくんだけど、そういう場合、ひとつでもトレーにのせてビニール袋にいれてわたしてる。えー、そんな経費かけたらもうからないじゃんっ。ゴミも出るし、お互いにいいことないじゃん、と思った。近所で自家製の漬け物を売っているところでも、トレーに漬け物を行儀良く並べて売っている。スーパーの袋みたいにトレーを再使用したいんじゃないし、「資源ゴミに出さなくっちゃ」というプレッシャーがかかるし、不要なんじゃないかと提案したが、「袋だけだと見栄えが悪いから」と言うんだ。
 そんなもんかなぁ。

「WEB本の雑誌」に目黒考二さんの「目黒考二の何もない日々」というコラムがあって楽しみにしている。ほぼ毎日覗いているのですが、愛読者の気持ちも知らないで、毎日更新じゃないのが、至極残念であります。
 ちょっと前に、思わず人ごとのように笑ってしまった(4月25日分)のですが、そこ(執筆者界なのかな)には「旅先のひどいめ自慢・みじめ自慢」に似た世界があって、「目黒さんとその周辺のひどいめ自慢」に、ふむふむ、気をつけねば……と思ったのでした。

 やはり何日か前、新聞を呼んでいて、ふむふむ……。で、えー!? それって、ひどいじゃない……。また、しくしく……だ。
 記事は安い賃金での労働を強いられている人たちの話で、派遣社員として工場で働いて寮費などを引かれると手取りは3万円以下になってしまう現状が、今の日本にもある──というルポでした。
 安い賃金で働かざるをえない理由のひとつとして、何の資格をも持ってないから。ルポの最後に専門職に就ければもっと高い給料がのぞめるのでは……とあって、彼女はその資格を得るためある試験を受けようとしている。試験費用の2500円もままならないので借りたとあった。そんなんだと試験を受けるための勉強の教材だって、絞り出せるものじゃないことは想像がつく。で、そのルポは「本屋で立ち読みをして勉強をするつもりだ」のがんばり心で締めくくられていた。
 えっ? 新聞社だって同業者じゃないか? でも、新聞の立ち読み姿は見かけないな。だから、いーのか、こういう締めくくりで。せめて、図書館に参考書をリクエストして、借りて読んでくれないだろうか? と、零細出版社なら思うが。こういう本は図書館にリクエストしても受けてもらえないのかな? それはともかく、大手出版社だけが日本の出版社事情じゃないのに。残業だって、サービス残業みたいな扱いで仕事して、それでも売れなかったら収入にならないし、そういうお父さんにも家族がいるんだろうに、買う側を一方的に弱者にしないでほしい。
 これって、この教材をうちが作ってるんじゃないけど、作ってる出版社にとって目黒さん級に、ひどいめ自慢してもいいんじゃないかな、って思ったのでした。だって、そのルポの下には記事とは関係ない本だけど書籍広告が載ってたし。
 情報誌の記事を携帯電話のカメラで撮って、本を買ってもらえないってことモンダイになったじゃない。本屋で立ち読みされて買ってもらえない。本は傷んで出版社に返品されてくる。わたしだって安いモノでかまわないものは、安いモノに流れる。でも、これくらいなら払ってもいいな、という基準を持って買い物をするようにつとめている。だって、あんまり安いモノがはびこると、そういう安いモノを作らされる、安いコトを強いられる人たちが増えちゃうから。作っている人に敬意をはらいたい。
 そういえば、ゴールデンウィークに仕事していたら、とあるアジア系航空会社がスポンサーのひとつになっていたラジオ番組で、メインキャストの男性に「どこに行きたい?」って質問されたアシスタントの若い女性が、「アジアは怖いから、ヨーロッパがいいな」ってが答えてた。これも「えっ?」っだった、ひどいめ自慢に、できるな。わたしのひどいめ自慢じゃなかったけれど。