否シンメトリー

 パスポートのわたしは、目の位置が左右で5ミリほど違う。明らかに左目の位置が右目より低い。それで鏡の中のわたしを凝視してそれを知ろうとするが、わからない。5ミリ(写真で感じる)ってすごい数字だよなーって思って免許証の写真で確かめてみても、やはり左右の目の高さが、すごく違う。

 顔の左右がシンメトリーじゃないってことでいまさら驚いた訳じゃない。それより問題なのは、この秋、左右の足の形が違ってきたってコトだ。うーむ、素人判断で、外反母趾と推測する。流行モノに疎いくせに、最近は風邪の流行モノに惑わされがちで、とうとう流行モノかもしれない外反母趾になった。

 しかし、待たれよ。20代のころならハイヒールだって履いたが、30代からは足元はチャッパル・ライフで、締め付けて歩いたりもつま先だって歩いたりもしていないのに、なぜわたしの足が外反母趾になるんだろう?

 ルーマニアで、それはそれはよく歩いた。毎日毎日、朝から夕暮れまで歩き倒して足の親指の付け根あたりに痛みを感じて触ってみたら、なんと、こぶができているじゃありませんか。よくよく見れば、それは硬いスニーカーまで変形させて、靴の右足のその部分の表面がつるつるに光ってる。なんだなんだ、これは? そうなるまで気づかない自分にも驚いた。
 なんて痛みに鈍いんだろう。

 親指の付け根の骨のこぶを触ると軽く痛みを感じるけれど、くりくりしていて感触がいい。膝を抱えて座っていると、こぶに手が届いて、つい触ってしまう。触って触って大きくなってしまったりするかな? 大きくなったらまずいのだろうか? 手首のところにあるくりくりした骨に似ている。

 新聞で読んだ記事によると、足の裏の筋肉が弱って外反母趾になるそうだ。それに遺伝的要素もあるそうだ。身内に外反母趾? そんなこと訊ねたこともないのでわからない。親指がいちばん長いひとや関節の柔らかいひとにもみられるって書いてあったけど、わたしの足はそんなとんがりタイプじゃないし、カラダはやや硬めで、どれをとっても当てはまらないのにな。体重は関係ないのだろうか? 強いていえば、ぺたぺた歩きがいけないようだ。
 記事によると踵を地面に着地させてから体重を足裏にのせ、足指まで体重を移動させるのが良い歩き方で、日ごろから重心を前に置いて足指の裏を接地して立つように心がけるのが、外反母趾対策だそうです。
 ふ〜ん。

 要するに、外反母趾ってのも加齢症のひとつのようだ。それじゃあ、わたしの足のくりくりが本当に外反母趾なのだろうか? たぶんそうで、それなら早く治療しなければ……とインターネットで専門の病院を調べたら、初診料が8,400円とあって驚いた。次回からの治療料金にも驚いてしまって、そうしたらなんと! 翌朝、痛みがかなり薄らいでしまった。なんと親孝行ならぬ主人孝行の足よ。現在はひたすら足の裏を鍛えている。
 このご時世、脳と懐を驚かすっていうのも新手の経済的治療法なのかもしれませぬ、な。