指先がイタイ。

 握りばさみでチョキぃ〜チョキぃ〜、と夜ごと糸を切っている。着なくなった服からボタンやファスナーを取り外し、ポケットなんかも細工に使いやすいので、これも取り外す。それもこれも、週末の楽しみのために。

 で、最近の作品が写真のショルダーバッグだ。二十代半ば頃にはいていたオーバーオールの両足の丈を詰めてひねり出した端布をベースに、ネパールで作ったバッグのポケットを取り付けた。
 カトマンズからはじまってインド、パキスタン、イラン、トルコからギリシャやらチュニジアを通ってアフリカを旅して各地の染みを含んだバッグだったので、捨てるに忍びなくてポケットの部分だけ取っておいたのだ。16年後の再デビューってやつだ。肩紐は、他のバッグのモノを流用。


 さすがに十代に着ていた服は今はもうないが、二十代、三十代で着ていた服を五十代になってもバリバリの現役で着ている。昔のイメージで着て鏡で確認すると、「あれっ?」と首をかしげることが多くなったこの頃に、ちょっとココロ痛めているが。あまりにも無惨に似合わなくなった服は解体して、再デビュー、ウェイティング・ボックス行きになる。
 緑と赤の縦縞のオーバーオール、これを着ると肩が凝るようになったのでズボン丈を短くして軽くなったらまた着られるかな? と思いついたのだ。

 うちでいちばん寒い場所にミシンの置き場をゲットして今年の夏は快適だったけど、冬になると寒くって辛い場所になった。で、電気ストーブを買ってもいいと言われて、週末に近所の電気屋ダッシュ! 安売りで有名なお店が徒歩圏内にあるが、持ち帰るためにクルマで行った。

 流行りのカーボンタイプを見ていると「それは人を暖めることはできるけど、部屋は暖まらないからね」とアドバイスを受けた。はいはい、わかりました。でも、わたしはそれでいいのだ。しかし、わたしが選んだモノは在庫がなくってお取り寄せってことになった。

 2週間ほどかかります──そう聞いた。お金を前払いし、それまでは厚着してミシンを踏んだ。暖冬のおかげで、待ち遠しい気持ち以外はそれほど辛くなかった2週間だった。
 待ち遠しい2週間後の週末がやってきて電話したが、まだだって言う。「いつになるの?」って訊くも「メーカーからの返事がなくって全然わからない」と。
 なにそれ? わたしが聞いた「2週間ほどかかります」は、2週間後に聞くと「取り寄せの目安」になっていた。
 なにそれ? 夏用の扇風機のお取り寄せならそれもかまわないけど、冬用の暖房機のお取り寄せにそれはないでしょ? 2週間後には届くと錯覚させるようなもの言い、ポイント買いだったけど、ちゃんと前払いしたのに……。

 お金を払うことによって、「ちゃんとくださいよ」の確約を得る──なんだかこれは、買う側が立場弱いな。買ったるっ!の強い立場なら後払いだろうか?
 お金を払うタイミング、暗黙の信頼関係で特別意識はしてなかった。チケット制じゃなければ、食堂では食べ終わってから払う。魚屋とか八百屋では、わたしはほぼ同時。物々交換のように、お金と商品をやりとりしてる。無意識に、というか、なんの用心もせずに。

 悔しかったけど、取り寄せ商品をキャンセルして、2000円追加して在庫のある違う商品を買った。すごく悔しかった。お店の人は「そこはとても小さなメーカーですから、なかなか返事がこないんです」「他の店の在庫を調べてもいるんですが、なかなかわからなくって」と言って、それが賢明ですねって偉ぶった口ぶりだった。
 ふんっ!「大手の店のくせに在庫管理が手作業かい?」の嫌みのひとつも言いたかったが、だったら、最初からそう言えよ。現実味のない口約束に金を払って、ちょっとだけぶるぶる震えたわたしの大事な2週間をどうしてくれる! と怒鳴りたくなったが、そんなことしたら最近流行りの「切れたオトナ」になっちゃうので堪えた。
 クラマエには「なぜ内金だけにしなかったのだ! なんど同じ過ちをするのだ?」とわたしの過ちの方を叱られて踏んだり蹴ったりで、うぇ〜ん! だ。 

 そういえば、旅先でなんどもそういう過ちを繰り返した。そのたびに、クラマエに「学習しないアタマっ!」と怒られたんだが、ふ〜。これは日本のグローバル化の落とし子なんだろうか? もうあそこでは買い物しない! とココロの中で息巻いてみたが、まだポイントがあって買い物ができるんだよな。