エコポイント。

 急須に湯を注いだ。もちろん、お茶を飲むためだ。なのに風呂につかっていて、その茶を飲み忘れていることを思い出した。う〜む。
 日本茶っ葉は長いこと湯にひたしていると味がゆるゆるになって、苦いを越えて青臭いような、ふにゃけたまずさが出てくる。せめて湯呑みについでから忘れたらよかったのに。風呂を出てからじゃ、きっと飲めたもんじゃないな。残念なことをした。
 エコポイント、マイナス1。

 風呂の掃除中に、小さくなった石けんを新しいのに取り替えようと思いついた。小さくなった石けんは泡立ちが良くない……そんな気がする。おろしたての石けんの泡は元気がいい。気のせいだろうか?
 髪を洗おうとして石けんに手を伸ばしたら、それがさっきのままである。悲しい。小さな石けんをアタマにぐりぐりと擦りつけた。しくしくだ。
 実は、それから数日たつというのに、風呂場の石けんはあの時と同じで小さいままだ。今朝もそれをアタマにぐりぐり擦りつけてきた。
 無駄なく石けんを使いつづけて、エコポイント、プラス1。

 オソージガカリさんが、安くなった映画のDVDを買ってくる。で、先週の土曜日に「ビッグ・フィッシュ」という映画を観た。それで終盤にさしかかって「観たことある気がする」と言い出した。が、わたしには初モノだ。
 わたしが「観たことある」で、オソージガカリさんが「ない」は無い。その逆はかなりある。
 ラストシーンで、「これ知ってる!」と、ショックを受けていたオソージガカリさんでしたが、わたしにはそれが彼にとってどんな種類のショックなのかは推し量れない。

 祭日だった火曜日にも映画「エネミー・オブ・アメリカ」を観た。途中、わたしは覚えのあるシーンを数か所見つけ、「これって観たことある」と言ったが、そのたびに「ない」と言い返された。
 天に誓ってもいい、ある。
 でも、オソージガカリさんが言うには、それで構わないらしい。前者との違いは、すっかり忘れていればそれは初モノと同じなんだそうだ。
 わたしの心配は、そんなにすっかり忘れちゃっているっていうところにあるのだが。まあ、いいか。

 同じ映画を初めて観るように楽しめるのは、「ひとつで、2度美味しい」に似ている。忘れちゃえば、2度でも3度でも楽しめる。これにもエコポイントは付けてもいいのだろうか?

 今年もよく忘れ、ときどき思い出し、一歩進んで三歩くらいさがっているような一年だった。こんなんでいいんだろうか、と思いつつも、こうやってどこかに向かっていくしかない。人生一筋縄ではいかないな、を噛みしめて、2009年用の縄を綯わねば。

 2009年も旅行人をよろしくお願いいたします。