昏々と眠った。

 先週の金曜日、外観のみの内容のともなわないバージョンアップをした。
 50を過ぎた場合の内容とは、どーいうことをいうのだろう。内蔵とか機能とかだったりするのかな? それじゃぁ中身はバージョンダウンしたな。それで、弛みのシワの数が増えて、外側はバージョンアップだ。

 ということで、アリエスの乙女は朝からちょっとすっきりしない体調ではあったけれど、今年もかろうじて誕生日をやりすごせた。

 というのもここ三年ほど願いつづけていたフグをようやく誕生日の金曜日の夜に食べて、電車に乗って、歩くのがしんどくなってタクシーに乗って帰宅し、テレビの前の卓袱台の横にダウンしてそのまま日曜日の朝までほぼ寝つづけた。

 不思議なほどにトイレに行きたくなることもあまりなく昏々と眠り、土曜の朝にお餅二切れと目玉焼きを食べて昏々と眠り、昼に目覚めて夏みかんをふたつ食べて昏々と眠り、午後に目覚めて花林糖を食べて昏々と眠り、夕方にもらい物の唐辛子入りの昆布茶を二杯、梅干し(計8コ)も入れて飲んで昏々と眠り、夕飯にスパゲティとお焦げ入りのミネストローネを食べて昏々と眠り、日曜日の朝を迎えた。

 あぁ、こんなに寝ちゃって、大丈夫だろうか。それでどろどろに溶けたアタマに、ふと浮かんだセリフ。

「眠れぬ森のブス」

 二十歳のころわたしに、ある先輩がそう言ったのだ。
 美人は寝ていても起こしてもらえるけど、ブスは眠ってる場合じゃない。寝ていたら、顧みられることなく、何もかもが通り過ぎていく。だから、しっかり目を開いて、起きてるんだ!


 タクミさん、わたしも五十代になったんだから、もう寝てもいいよね。