パン焼き器

 青息吐息のウォシュレットが心配になって早速買った。
 ら、がんばりだしてしまって、取り替えにマッタがかかってる。この分だとテレビの方が先に火を噴きそうだ。以前はテレビをつけてから時間がたつといくぶんマゼンタがおさまってきたのに、今はまったくそんなことはなく、いつまでたっても真っ赤っか。その色は、タイのコサムイで腸チフスと闘ったときのような、かなり高熱の様相。


 ウォシュレットの意外ながんばりに拍手していたら、パン焼き器が突如壊れた。う〜む、その壊れ具合が計りにくいんだが、とにかくパンが基準位置まで盛りあがらない。食べられる程度には膨らむ。前回も今までの半分程度にしか膨らまないので、イースト菌が古かったのかな? と新しく買い換えたんだけど、今朝も釜の半分あたりまでしか膨らまなくって、取り出すのが大変だった。
 とりあえず食べられたので食べたけど。
 しかし、イースト菌のせいじゃないことが判明したのはよいが、どこまで悪く、なにが悪いんだかわからない。


 パン焼き器は衝撃のデビューで当初は高額だったが、わたしは運良く「当たったけど要らない」っていうのをもらった。1987年からそれを使っているから、かれこれ22年、1986年購入の電子レンジの次にご長寿だ。
 いや違った。ジューサー&ミキサーと扇風機が、たぶん1982年あたりに購入して、今だ現役。アイロンもそれに近いが、あまり使わないんで、壊れようがない。扇風機は毎年使っているが、首を振らなくなり、ウェーブ機能が消えちゃったりしているけど、「風を送る」という基本行為は健在。

 パン焼き器は途中一回、パン生地を捏ねる羽が折れて釜を変え、世田谷〜練馬と4か所の台所で働いてきた。使い初めの頃は、ぱったんぱったんと大きな音を立ててパン生地を捏ねる音と、焼き上がり前に再び大きな音を立てるんでオソージガカリさんの顰蹙をかっていたが、タイマーで朝に焼き上がるパンの匂いで起こされる朝、鬱陶しく降りつづく雨の朝でも凍えるほど寒い朝でも憂鬱でも疲れていても、美味しい匂いは幸せを運んでくることを知った。


 買い換え時なんだろうか? と思って機種や値段を調べていて、あることに気づいてしまった。

 新しいパン焼き器がやってきたとする。そのパン焼き器とわたしの寿命、次はどちらが先に逝くんだろうか?