40マルクの将来。

 連休を使って小そーじをした。大そーじってことでもやぶさかではなかったが、こういうことに欲張ってはいけない。

 オソージガカリさんの腰痛のせいで、足裏がざらざらして気持ち悪い日がつづく。連日の強風で、近隣の畑から土が巻き上がって大量に窓から入ってきているのだろう。それにしても畑の土の量は大丈夫なんだろーか? 隣りの畑から順繰り順繰り・・・土がまわってくるから平気なのだろうか?

 それはさておき、たいした肉体労働をしたんでもないのに、なんでこんなにも疲れてるんだろう? いや、疲れているのはカラダじゃなくってアタマなんだが。アタマの疲労がちょっと下りてきてカラダもついでに疲れた、ということだと思う。
 家の中の散らばったままあるそれぞれのモノにそのままそこに居つづけても可か不可の指令を出し、不可ならその後の移住先なりゴミ袋行きを告げねばならぬ。司令官としての任がわたしには分不相応、荷が重いのだ。
 そしてゴミ箱とゴミ袋に入ったモノを集積所に持って行くのはぺーぺーのお仕事なんだが、オソージガカリさんはどーいうわけかゴミの日が覚えられません。

 まずは簡単なところでビデオテープは処分すべきか否か? 実はビデオデッキが大切なテープをくわえたままそれを放さない。壊れてるんじゃないかという説もあるが、放させたら直るのか? 安く直せるモノなら直したいんだが・・・の思いは行動に移ることなく氷結。
 まあ、それはさておき、観ることが不可能に近い状態で大量のビデオテープ保持はいかがなものか? で、オソージガカリさんにゴミ袋をわたしたら4袋出た。非情に重かったそれらを可燃ゴミで出すのはぺーぺーの仕事だ。

 曇り空の日にはじめたせいか、大量の布袋を洗濯して干して新たな収納場所の確保を含めた作業が、一日半仕事になってしまった。連休前に二十代の頃に使っていた羊革のショルダーバッグを久しぶりに持ち歩いたらアタマが痛くなった。かび臭かったので二日ほど干してから使ったというのに、どうもあれはダメだな。高かったのに、しくしくだ。
 母に「バッグがかび臭い」と言うと、「洗濯してやろうか?」と言われた。やはりその昔、ダウンのシュラフを預けたら「かび臭い」と言われて、三万円強のそれを洗濯機で丸洗いされた。あの人にとって、洗濯機は万能のようだ。

 まあ、これもさておき、古いクスリとばんそこうを捨てて、イスの上に踏み台をのせないと手が届かない棚にのったものを下ろした。ここ数年、そこを触ったことがない。ついでにその下の金庫を下ろした。金庫といってもお煎餅の入っていた缶なんだが、小さいくせに重い。コインが入っているせいだ。20世紀の旅の遺物だ。下ろしついでに、引き出しの中のコインや、食器棚、洗濯機の脇、靴箱、本棚、家の中のあちこちに置かれたままのコインを集めたら、タイバーツとインドルピーが手のひらに山盛りになって、ああ嬉しや。
 ミャンマービルマだった頃のコインや、でかくて重いけど・・・のケニアのコイン。出国の空港で再両替しようとしたら、手数料にも満たないからダメと言われたギリシャのコイン。今やユーロになってしまったフランス・フランやイタリア・リラのコイン、スペインはペセタだろうか? このあたりはコイン程度だから許せるが、ドイツマルクに至ってはコインだけじゃなく、20マルク札×2枚もあった。たぶんこれは1987年の旅のおつりではなかろーか? 1マルクは80数円したんじゃないかな。
 物価が超上昇したと聞くトルコらしいが、わたしのリラでまだなにか買えるかな? イラン・リアルもある。アルジェリアディナールも。そういえば、アルジェリア洋品店で両替を頼んだら、神からの贈り物だと言って1万円近いお金を貰ったなぁ。それで中華料理屋でごちそう食べて、サハラ越え用のジャケットを買ったんだ。ジャケットはニジェールで売った記憶がある。
 旅した頃に比べるたら超安値になってしまったセーファーフランと南アのラント。アラビア文字なのか判読不明のコインもあるし、今やインドじゃご対面できないほどのピン札の1ルピー、2ルピー、5ルピー札。中国元の角とか分はまだ使えるんだろーか? 一応、それもぴん札なんだが。
 行った覚えのないユーゴスラビアやザイールの札もあった。これらはもらったものだ。行ったこともなく貰った覚えもないベルギーのコインが1枚あるのはなぜだ? 
 あと百年ぐらいたったら、昔のコインってことで商品になるのだろうか? 空港にある基金の箱に入れてきたならこれらのお金も世に出て役に立ち本望なんだろうが、わたしはみみっちい性分なんで、なんでもかんでも集めて身動きできない状態をつくってしまうんだ。
 実は、今回の小そーじで家の中のあちこちに置かれたあるモノをかき集め、そのあまりの量に唖然としてしまった。こっちの方が始末に負えないモノで、行く末が不安です。それはまた、次の話で。

 国籍不明のコイン