壊れていく。

 反省するを辞めると決め、今年に入ってからというものココロが努力を拒否しだした。
 大丈夫だろうか?

 数日前、近所の郵便局で「落としましたよ」と言って財布を手渡された。座って順番待ちをしていて立ち上がった際に落としたようだ。ありがたやありがたや、たぶん中華系の男性よ。
 今日も銀行で、「落としましたよ」と通帳の入ったポーチを手渡された。今度は年配の女性だった。ありがたやありがたや・・・そんなこと言ってる場合じゃないってば。今度もソファに座って順番待ちをしていて、立ち上がった際に落としたのだ。
 大丈夫じゃない気がしてきた。わたしに大事なモノは持たせるなっ! 預けるなっ!

 もしかして、どこか壊れだしているのかなぁ? 通勤途中の空はどんどん広くなっちゃうし、わたしも世の中(といっても東京のほんの片隅なんだけど)も壊れていく。

 壊れるってどういうことかな? 働くなることだろうか? 単に動かなくなることだろうか? 動いてもお役目なさないと、壊れたって言われるのかな?
 そういえば、壊れるまで使ったモノって少ない。洗濯機も冷蔵庫もいろんな事情で壊れる前に買い換えた。テレビは壊れかけている途中だったし、電子レンジも壊れてくれなくってしびれを切らして買い、いま、新旧両方使ってる。トースターと牛乳の電動泡立て器は、壊れてから何度か買い換えた。
 人を「壊れた」と思っていいのは、どうなってからだろうか?

 要らないモノなら捨てよう・・・と妹にせっつかれて、実家の倉庫をチェックした。
 したら、成績表が出てきた。恥が広がる前にシュレッダーにかけねば・・・と思いつつ3週間が経つ。

 昨年の12月、訳あって韓国旅行をプレゼントされ、ソウルに三泊四日してきた。朝早い飛行機に乗って夜に帰るというゴージャスなJAL旅だった。それでなんの迷いか、ソウルで化粧品を買ってしまった。実に二十数年ぶりのことだ。
 実家に帰るたびに母に「カオがキタナイ」と嘆かれるんで、帰省するときは化粧をして帰ろうと奮起したのだが、持って帰るのを忘れて、いつもどおりの正月になってしまった。
 友人につられてソウルで顔用のパックを買った。帰省する前夜にカール・ゴッチ風の覆面パックをしてオソージガカリさんを驚かせてしまった。「13日の金曜日」を思い出させてしまったようだ。
「なぜそんなことをするんだ?」と訊かれたんで、「買ってしまったからだ」と答えた。
 深い意味はない。

 ソウルの明洞、通称エステ通りと呼ばれているらしいんだが、化粧品屋の呼び込みがすごかった。歩いていると化粧品のお試し品を手渡されて、店に誘われる。お試し品だけ貰って通り過ぎようとしたら、取り返されてしまった。ここはソウルだし、大泉学園駅前のパチンコ屋の前で配られているテッシュペーパーとは違うようだ。
 一緒に行った友人が「頼まれた」と言って、とあるブランドの化粧品屋に入った。彼女は頼まれた分と自分の分と会社の同僚たちへのみやげ分を買ってレジに持って行くと、大量のお試し品をおまけに貰ってきた。つられて買ったわたしにも大量のお試し品がついてきた。

 そうか、これだな。
 化粧品を頼んだというその人は、こういうのに釣られてわたしの友人に「買ってきて」となったのだ。わたしの母もその昔、猫のエサをまとめ買いするたびにおまけに渡される高級ネコ缶にネコが味をしめて、行くたびにエサのランクが上がっていくと、母が嘆いていたなぁ。

 毎度のことながら、有意義な話は書けなかったが、今年は正月早々に事件があって、こんなはじまりだ。
 しくしく・・・だ。