呪い。
ミントがばしばし育って、ミョウガもぐんぐん育って、引っこ抜いても引っこ抜いても根性有りのクマザサとドクダミ、新種の草もお目見えで、それはわたしのイメージするところの野原を超えて、単なる野放しの庭だ。
歩くとドクダミとミントとレモンバームと除虫菊(たぶん)のニオイがまぜこぜになる。
あそこの花、どんなのが咲くのかわかってて植えたのか?──と訊かれたけれど、あれは夏と秋と冬と春を越した昨年の花だよ。どんな花だったのか覚えてないけど、白だった・・・と記憶する・・・かも。
去年「キレイだ」って言ったじゃない、確か・・・。
どんなだったのか説明できなくって、まったくもって情けない記憶力だよ。
のこぎり片手に脚立の上で背伸びして木の幹を切った。
枝ならともかく・・・それは幹だ、死んじゃう・・・──と言われたが、ソレはわたしのことじゃないのね。
木を心配された。
これ以上育ってしまったら手に負えなくなるので縦への成長を止めたいのだ。去年も他の木の幹を切ったが大丈夫だったから、きっと平気だよ。うちの庭に育つ植物は、そういう風にできているのだ。
それでわたしの怨念で「枯れた」とされている木が2本ある。クルマをちょっと大きめに替えたら通り抜けがしにくくなって「アレがなければ歩きやすいのに」って言い出したのはわたしじゃない。「そうだね」と同意しただけだよ。
二人分の邪気で木が枯れた。でも、そこには植えた覚えのない木が伸びている。他にも覚えのない木が育って、引っこ抜こうとしたが手遅れで抜けず、それで根元近くで切ったんだがまた伸びて、「それほどまで、わたしの庭が気に入ったのなら・・・」とそのままにしている。
何の木だろうか?
どうせなら、実がなればいい。とても長くて丈夫なトゲがある。生ゴミを土に埋めてるので、その中にあったなにかの種ではないだろうかと推測するが、あーそれは絶対にマンゴーでもドリアンでもないのが残念だ。