唾の威力

 こんな状況ですが、役にも立たず知恵も増えないわたしのブログはそのままです。日曜日に無事帰国し、家と事務所のある東京の端しっぽにたどり着きました。出発前には空き地だった2軒隣りに平屋ですが家が建っていた変化がありました。まだ途中ですが「ログハウスをずっと建てたかったんだけど諦めた」という施主さんの家が小さい分、庭が広いという贅沢に小さな家です。

 針に糸をとおすとき、わたしは糸の先っぽを舐める。糸の先を濡らしてまとめないと、針穴に糸を通せないから。小学校の家庭科でそう習ったわけではないが、母がそうしていたのかな? そんなもんだと口と指先が覚えている。そして、ビニール袋が開かなかったり、これは滅多にチャンスはないが、札を数えるとき、ついつい指先を舐めてしまう。これは生活の知恵だと思う。
 だけど、どうも、これらは、昨今じゃ、人前でやっちゃいけない行為みたい。自分がやるぶんにはごく自然なものなんだが、だれかがいた場合、相手に気持ちのよくない印象を与える行為の部類にはいる(らしい)。だから、さすがのわたしも自粛中です。
 それでは、これはどうだろう?
 運針をしていて、針先でアタマをポリポリと掻く。こうすると、堅く締まった布でも針がとおりやすくなる。アタマの脂で針の滑りを良くしてるんだけど、他人のアタマの脂のついた針で刺された布は気持ち悪いかな? 
 子どものころだが「お金を触ったら手を洗いなさい」と母はよく言っていた。多くの人が触ったお金だし、どんな人が触っているのかわからないから、汚れている・・・というのが、彼女の言い分だ。
 昨今のわたしは人前でのスーパーの袋は「つい」を気をつけて、常備されている濡れタオルで指先を湿らせる。だけどよーく考えてみれば、あの濡れタオルはお札と同じで多くの人が触っているし、どんな人が触っているか判らないモノだ。その後、その指先を自分とだれかの口に突っ込まなければよいだけなんだが、ね。
 重宝する己の唾なんだが、スプレー式の消毒液がまだなかったころ、転んで擦りむけば、とりあえず舐めていた。というか「唾をつけておきなさい」と母から言われていた。わたし以前の世代はほぼそうだったんじゃないかと思うが、病院とクスリの嫌いな母は「唾をつけておけば治る」と言って、娘が希望する消毒液もヨードチンキも用意してくれなかった。いま思えば、お金がなかったのかな?
 まあ、それはともかく、昨年11月ごろからつづいている目尻の赤味が、結局病院に行っても「加齢症」のひとつで片づけられクスリを塗ったが治らない。そのクスリがステロイド剤ってことだったので、これは長く使いつづけちゃまずそうってことで、ゆっくりとやめた。
 痛くも痒くもありませんが、口の端にできるヘルペスみたいに赤いのでちょっと見た目が悪い。ポルトガル取材中もずっとヘルペス状態でうんざり。そこで、突如、思い出した唾のチカラ。帰国二日前から唾を指先につけて目尻に塗っています。そろそろ一週間ほど経ちますが、赤味がほぼ消えました。まだ完治状態じゃありませんが、目立たなくなりました。
 唾つけとけば治る───の母の言葉、もっと尊重してあげればよかった。