情けの始末。

 青田には水を、人には情けをかけておきなさい。さすれば云々───最近の母の口癖です。
 母が子どもの頃、父親(わたしの祖父)によく言われたそうです。それが巡り巡って、最近の母は、わたしにしょっちゅう言います。
 はいはい、わかりました。
 言われなくとも、冷蔵庫にはわたしに情けをかけられた食品がたっぷり溜まって、情けの吹きだまりです。
 これらを夏の前になんとかせねば。扉の蝶つがい(?)が重みで緩んだのか、庫内に再び水滴が付きだした。3年前に直したのに、まただ。庫外が暖かくなると覿面です。これも夏前になんとかせねば。
 それで、寒かった昨日の日曜日、情け容赦なく始末すべく、冷蔵庫の中を掃除した。修理のひとが来るし、やはりそれなりに恥ずかしいを知ってるし・・・。
 小袋に入ったワサビとか醤油は難なく捨てられて、コーヒー用のミルクもシロップも捨てた。どういう経路でわが冷蔵庫にやってきたのか記憶のないエスニック系のペーストも、残りわずかのゆずこしょうまではへっちゃらで捨てられたが、グァテマラで買ったココアの素は戻した。待てよ、あれはメキシコで買ったのかな? そこのところ確かじゃないが、どちらもいつ行ったのかは思い出さないでおきましょう。
 戻した物はそれだけじゃない。八丁味噌ってやはり賞味期限てあるんだろうね、未開封だけど。
 野菜室は次回にして、冷凍庫もチェックを入れた。
 近所でカブを買うと葉っぱがついている。大根もそうだ。どちらも捨てずにそれなりに調理するのだが、萎れる前に茹でて、食べきれない分は冷凍する。大量に母からもらうモロヘイヤは好きなのだが、やはり食べきれない分を茹でて冷凍する。お豆腐にとろとろのモロヘイヤをかけて食べるのが好きだ。
 しかし、どれもこれも冷凍するとすっかり存在を忘れて、大根だってカブだって一年中手にはいるし、小松菜が好きなので新鮮なそれがあれば冷凍物なんか食べたくないので無視もしてる。
 それでも天候不良で葉っぱ物の野菜が高騰したら食べましょう、と思うが、うちの近所は幸いにも野菜はいつも安い。馴染みの畑のお母さんが「困ったらおいで」と言ってくれるし。それに冷凍のモロヘイヤは識別できるが、塊になった小松菜とカブの葉と大根が区別付かなくって、解凍に気がすすまぬのだ。
 豆腐も食べきれない分を冷凍すると高野豆腐ができるんだよ。これも溜まってる。お豆腐屋さんは信じてくれないけど。
 だから、情けは、必ずしも良い実をつけるとは限らぬのですよ、お母様。