ニュアンス。

 毎度毎度、たわいもない話です。
 身の回りの世話が必要・・・なわけでもないが、そろそろと孝行娘をやっている。母の苦手は梅と酒と甘い物と思っていたが、今年になって人生初のコーヒー(インスタントだけど)に挑んで気に入って、砂糖を2杯入れている。ミルクも牛乳じゃなくって、粉タイプが好みだ。
 実は、3年ほど前、食堂であんかけ五目焼きそばを食べた母に「初めて食べたけど、美味しいね」と言われて、胸キュンしてしまった。それからは、彼女が食べてないだろうモノを探しては、せっせと運んでいる。人生の終盤に、ピザを食べさせたり、クリームチーズ入りのパンとか、ビビンバもお気に入りになった。
 で、今月になって「コーヒーは封印した」と言う。案の定で体重が増えたそうだ。
 昨年の暮れ、自転車で坂道を登って、途中で力尽きて転けて、膝にひびが入った。病院体験の少ない彼女は、それはそれは大事に病院がよいし、完治したところで骨密度を調べて「60代」と言われ「骨壺に骨が入りきらなかったら、どこかに捨ててもいいからね」とはしゃいでいる。母の友人も骨密度を調べてもらって「50代」らしい。母は少々悔しがっている。
 いろいろあって、昨年は若い頃の農作業の大変さを思い出して「辛かった」と愚痴ていたが、骨密度の「良」を知ってからというもの「若いときからずっとお日様に当たっていたのが良かったのかねぇ」になった。
 それはそれは、よござんした。
 話はそれてしまったが、母の最大の苦手というか、年をとるととかく役所の連絡とか書類とか、とにかく新聞以外の活字に拒否反応を示す。それで溜まってしまったそういう書類を開封して説明して処理してあげると「大変だったねぇ」と娘のわたしに毎度毎度言う。溜め込んだ煩わしさに比例して、その回数たるや・・・で、そのたびに「大変じゃないよ、簡単だったよ」と毎度毎度言い返す。
 あ〜面倒くさいなぁ。
 で、そんな月日が2年ほど経ってようやく判った。彼女の「大変だったね」は、単に「ありがとう」なんだ。それならそうと「ありがとう」って言ってくれたらわかりやすいのに。それで、母に「大変なコトじゃなかったから「ゴクロウサマって言って」と頼んだが、ダメだ。すぐに「タイヘンダッタネ」になる。
 根負けして、タイヘンダッタネ=アリガトウとアタマの中で変換することにした。
 昨年の暮れ、ポンチョタイプの毛皮を手に入れた。可愛いのですが丈が短くって腹のあたりがスースーする。春間近になって、近所の買い物に着ていたら、馴染みの魚屋のお母さんに「いいねぇー」と誉められた。誉められることが少ない人生を歩んできたので、つい「ありがとー、古着屋で買ったのよぉ」と照れてしまった。
 ら・・・「古着屋なんて、リサイクルショップっていいな」とたしなめられてしまった。
 古着屋とリサイクルショップ、ビミョーに違うのでしょうか?