幸せの素。


 わたしの言うご飯は、炊き込みご飯でもなく、寿司飯でもなく、まさに白米のことであります。その白いご飯に漬け物があれば、これまた幸い中の幸いで、おかわりを堪えるのが日夜つらい冬の夜であります。なにしろ、うちの夕飯は夜の10時半ごろにはじまって、時には11時を超えてからはじまることもあるし、食器洗いにいたっては12時を過ぎることもしょちゅうなので、おかわりご飯は肉の素です。

 夏の漬け物は茄子やキュウリのぬか漬けが好みで、昨年は隼人カブを漬けてみましたが、なかなかいかんじ。コリンキー(カボチャの一種らしい、外観は黄色のプリンスメロン)を知人から貰い、サラダの具としてもいいけど、ぬか漬けも大正解でした。キャベツの古漬けに針ショウガを混ぜて食べるのも好きです。これは大量の白米とともに供する必要があるので、わたしの中で禁じ手にしてあります。

 昨年末、母に勧められてカブの葉をぬか漬けしてみましたが、漬け物の天才を感じるほどにわたしのそれは旨かった。

 で、冬になったら白菜と沢庵の漬物がわたしの幸せの素です。漬け物用の重しを手に入れたので、白菜を漬け込んでみましたが、味にシャープさがなくておかわり気分を誘われませんでした。漬け込む入れ物がみみっちいサイズであったことが、よくない気がする。

 そして正月、母の漬け物を食べました。

 わたしの母の料理には、はっきりいって母の味ってのはない。具が違うだけの煮物と刺身と冷凍ハンバーグとウインナー、出来合いのコロッケやトンカツでわたしの味覚は形成されてきた。しかし、母の漬け物は旨い。らっきょうも旨い。生姜の甘酢漬けも旨い。コンニャクも旨い。タケノコの灰汁抜きも上手だ。で、味噌も梅干しも作ってくれる。

 不肖わたくしも、いつか彼女の大いなる母の味を引き継ごうと志だけはしょっちゅう湧くのですが、大きな山にわたしの行く手は阻まれています。

 しかし、今回は沢庵の作り方を母に教わってきた。わたしが試す前に、昨日、広い庭を持つ友人にそのまま伝授した。まずは彼女に熟達してもらおうという算段であります。彼女はわたしよりかなり若いので、将来に期待がもてます。彼女のつくる漬け物も美味しいのです。先日、食べさせてもらったカブの梅酢漬けがとても美味しかった。それで、母から梅酢を一升瓶でもらってきたので、わたしはそちらのほうを是非とも試してみたい。

 ちなみに、この梅酢を手につけておむすびを握ると、おにぎりが傷みにくいんだそうです。今は冬だから傷みの心配はないのですが、梅酢でにぎりめしを握っている自分が、なんだか愛おしいのでした。

★沢庵の作り方:大根10キロを500グラムの塩で揉み、水が一晩で一気に上がるほどの重しでそれらの大根を押さえ込んで水分を押し出す。したら重しを軽くして7日ほどおく。1ビン(たぶん500cc)と4分の1程度の酢に砂糖を1キロ入れて一煮立ちさせ、冷ましてから大根と合わせて軽く重しをし、1週間ほど漬け込む、んだそうです。


 写真は、昨年秋(っていつだ?)に母から送られてきたハヤトウリが冷蔵庫から出てきました。