インドのほかほか。


 インドにはほしいモノが数え切れないほどあって、そのひとつに「インドのシュワッチ」(と勝手に呼んでいる)がある。たぶん絶対に手に入れられない、とこれまた勝手に諦めている。お金の問題より、置く場所がないのですな。

 それはインドの鉄道の駅のホームで見かけるエスプレッソの大きなマシーン。カップに差し込まれた管の先からたぶん熱風が吹き出て薄めたミルクが温められてるんだと思うのですが、その熱風の音を称してわたしは「シュワッチ」と呼んでいます。

 シュワッチされたミルクでつくったコーヒーは、インスタントなのにとても旨い。わたしはコーヒーにお砂糖を入れないで飲むのが常ですが、シュワッチのインスタントコーヒーはお砂糖がこれまたよく似合うので、インドの甘ったるい飲み物が苦になりません。駅で飲むティーパックで入れたチャイは茶の味が薄くて、お金を払うときに「旨くないのにマハンガ(高い)!」と嫌みのひとつも言いたくなりますが、シュワッチで入れたチャイは、ほかほかした口触りが気にいっている。

 憧れのインドのシュワッチであります。


 一年半前、ポイントをためて写真の品を手に入れた。コーヒーに入れるミルクを泡立たせるもので、シュワッチにはとうてい及びませんが、コーヒーをまろやかにする手動式マシーンであります。わたしは「ミルクのシュポシュポ」と呼んでいる。温めた牛乳の温度いかんで、うまく泡立つときと単なるほかほかした牛乳になるだけのときがありますが、牛乳をそのままコーヒーに注ぐよりかなりいい。お砂糖も似合います。

 だけどその単なるほかほか牛乳を惜しんで、知人からデロンギエスプレッソコーヒーメーカーをわたしの希望値で譲り受けました。娘がクリスマスプレゼントにと母親の彼女に強引にくれたものですが、三度使って性格に合わないとわかったそうです。それで邪魔なのでいくらでもいいから誰か引き取ってくれないだろうか……というモノを朝のコーヒー係のクラマエにプレゼントした。

 七、八回使った末、やはりクラマエの性格にも合わず、今は埃を被った飾り物になっている。で、時折大成功の泡ができるミルクのシュポシュポに返りました。

 流水りんこさんの夫のサッシーが、練馬駅のそばにインド料理店「ケララババン」を開店したので行って参りました。ケララババンのご自慢はターリーセットじゃなくってミールセットです。で、わかるようにそこでは珍しくも南インドのカレーが食べられます。ちょっと酸っぱいサンバルやラッサムがステンレスの盆にあって、脇で盛ってくれたご飯の上にそれらをかけ、ヨーグルトも足してぐちゃぐちゃにして手づかみで食べました。懐かしゅうて美味しゅうて、嬉しかったです。それで、テーブルの脇でふたつのステンレスのカップを空中遊泳させてから手渡されるチャイが、ほかほかしていてとても美味しゅうございました。

ケララババンは練馬駅西口を出て、千川通りを渡り郵便局方面へ2、3分。目白通りまでいかない洋服青山の手前です。月曜日は休み、11〜15:00、17〜23:00営業だそうで、スタッフ全員インドの方みたいでした。